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知の技法| academic skills(4)

仮説を導くためのトレーニング

· 知の技法

写生文章について一言

 5/18(月)現在、写生文章のレポート提出者は6名いますが、どれも素晴らしい文章を書いてくれています。やはり、自分の足で歩いて、眼で見て、空気を感じ取った感触が、知図をみただけではわからなかったのですが、文章にするとありありと蘇ってきますね。皆さんの文章を読むだけでFeel℃

Walkに伴走しているような感覚になります。この調子で、五感で感じたままを文章にしてみてください。本当に文章が素晴らしくて、正直、嬉しいです。

「仮説」を導くためのアブダクション

 さあ、ここから一歩、社会科学の「学問」領域へ足を踏み入れよう。

 はじめは「仮説」を導くというものだ。仮説というのは、「今の時点で自分自身が正解だと思っていること」といえば、わかりやすいかな。なんでだろう?の自分なりの答えだね。

 この時、まだ、本やWEBで調べてはいけない。自分の頭で考えることが大事だ。今、スマートフォンでググる習慣がついてしまっているから、もしかしたら、君たちの方が僕たちの世代より妄想力は低くなっているかもしれないな。自分のイマジネーションで、回答を導くトレーニングをあえてやってみよう。ここから数週間は、君たちを「妄想族」にしていくのが僕の勤めだ。

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 仮説形成の方法論としてアブダクションという方法があるので、解説しておこう。

 アメリカの論理学者チャールズ・パースは、推論には、演繹と帰納のほかに、アブダクションと呼ぶ「仮説形成法」、「仮説的推論」があると言及している。

 三段論法で有名な「演繹法」は、分析的推論と呼ばれている。大前提として原理や数学的公理をすえて、具体的事実を説明する手法だ。例えば、「人間は必ず死ぬ、ソクラテスは人間だ、したがってソクラテスは死ぬ」といったもの。また、「帰納法」は拡張的推論と呼ばれ、多くの具体的事実やデータから一般化できる「法則」を導くものだ。例えば、「りんごの実は地面に落ちる、ボールを空に投げるといずれ地面に落ちる、地震で本棚から本が落ちる、つまり、地球には引力がある」といった具合である。演繹法は原則や公理からトップダウンで推論を導くのに対して、帰納法は具体的データからボトムアップで法則性を導く点が特徴だと言えるね。

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 一方で、アブダクションの推論は、歩いているうちに驚くべき事実が見つかったとする。その時、「理由」を妄想するんだ。例えば、僕は、先日、埼玉県富士見市を歩いていた。すると街の至る所に貝塚があることを発見した。埼玉県は海がない。しかも、地図を見ると、東京湾から富士見市まで30km以上離れている。そこで浮かんだ仮説は「縄文時代、このあたりまで海だったのではないか」ということだった。また、「昔は荒川の川幅が広くて、川で取れた淡水でくらす貝なのではないか」という仮説も浮かんできた。このようにアブダクションは、現象としては現れていない「仮説」を想像上で構築する作業だ。今、目に見えていないからこそ、イマジネーションが発揮されるわけだね。このように浮かんできた仮説の中から、最も妥当性が高い仮説を選び、その仮説に基づいた分析的推論でゴールを目指す。これが科学的アプローチの順序だ。そして、最後には、その仮説がどれくらい具体的、経験的な観測に当てはまるかを帰納的に検証していくんだな。

八王子を歩いて浮かんできた仮説たち

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 上記のマンダラートには、不思議に思ったこと、面白いポイントとその仮説が描かれている。

 マンダラートは、3×3のマスを作って、真ん中のセルにテーマを書き、周囲8つのセルにアイデアを書き込んでいくという道具だ。これを利用して、Feel℃ Walkで導いた仮説をまとめる訓練をしよう。

 みんなの知図には、8つの不思議・面白ポイントがないものもあった。だから、なければもう一度歩いてみよう。大それた発見はいらない。小さな小さな発見でいいんだ。見つけようとしないで、ただ受け取ろうという考えで、オープンマインドで歩いてみよう。きっと世界が君たちに不思議を差し出してくれる。

課題:知図から仮説を8つ導きなさい

マンダラートのフォーマットをmanabaのレポートにお題と共にアップしますので、ダウンロードして、そのマンダラートに知図から導いた不思議・面白ポイントとその仮説を8つ導き、埋めなさい。

締め切り期限:2020年5月31日(日)am10:00まで

わからない点・不明な点があれば、manabaの掲示板に「質問」してください。