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予習|知の技法| academic skills(2)

Generative Learning

· 知の技法

課題をクリアするための道具解説

 皆さん、こんにちは。原尻です。manabaと連動して、授業を進めていきます。

 manabaで4月24日(日)までに「知図」を作成する課題を出しました。

 皆さん、どうですか?自宅の周りを散歩して、体を動かしながら不思議の種、面白そうな種を見つけ、それを「知図」に落とし込むのが課題です。なるべくたくさん描いて欲しいです。ここでは課題の部分に当たる解説を丁寧にしていきます。

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 道具は8つ。Generative Learning(内発的に好奇心が湧いてくる学び)を行うための考える道具です。今回はフィールドワークを行う1~3に絞って解説します。これを読んで、知図づくりに生かしてくださいね。

道具1:探検の五原則

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 この五原則は人類学者の川喜田二郎先生によって、「野外科学」で学びの種を発見する上で、生み出されたものです。これ、受験勉強の原則と真逆ですから、気をつけてくださいね。まず、フィールドに出たら、「何か、見つけるぞー」と変に力まないでください。むしろ、なんとなく歩く。歩いている先に「原則4:なんだか気になるものを全て取り込め」です。気になる花、気になる建物、気になるものを全てスマートフォンで写真で撮る。これが大事です。気になるものをただ押さえる。その態度が「原則2:飛石づたいに取材せよ」につながります。関連性なんて考えなくていい。ただ、現場で得たヒントや感覚にしたがって、飛石づたいに動いてみましょう。その際、感覚は全方位に注意を向けることが大事です。「原則1:テーマをめぐって360度の角度から取材せよ」です。空を見て、気になったカラスでもいいですし、自宅の前にある苔の生え方でもいい。あるいは電柱の形でもいいし、信号の形でもいいんです。近所の神社に行ったら、御祭神は誰かを調べて、神社巡りをした時に何か見えてくるかもしれません。もうなんでもいい。生きているこの世界を丸ごと全方位で見渡してみましょう。そして、「原則5:データを<定性的>に豊かにとれ」です。数値化できるものがデータという認識はやめましょう。自分が見たものをじっくり「観察」することです。そして、どういう構造になっているかをメモし、絵にする。これは人類学者がやっていた定性的なデータの取り方でした。皆さんはまずは写真でたくさん対象物を撮って保存しておいてください。そして、最後に「原則2:ハプニングを逸するな」です。不思議の種はハプニングがもたらすことが多いからです。科学的大発見は、ほとんどがハプニングから生まれています。計画通りなんて言葉は必要なし。現場で起こるハプニングを楽しみながら、その意味を面白がるように観察しましょう。この五原則を意識して、フィールドに出てください。

 僕たちが生きる世界は、不思議に満ち満ちた世界です。でも、今を生きる人間たちの不思議を受信するアンテナはかなり低くなっています。合理主義のもと、些細なものは見過ごされがちだし、「目的」が大事で、それに向かって効率的に邁進することを教えられてきましたから、身の回りをキョロキョロしながら楽しむことなど滅多にないでしょう。でも、「発見」を重視する場合、目的効率モードを一旦ストップしましょう。僕たちの感度を高めるために、好奇心の赴くまま、歩いてください。不思議の種は、必ずみつかります。そう、世界は、不思議を、常に僕らに差し出してくれているんです。STAR WARSではないですが、「不思議発見のフォース(力)」をゴールデンウィーク終了までに鍛えましょう。

道具2:水平思考

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 「探検の五原則」に近いですが、エドワード・デノボが発言している「水平思考」も「発見のフィールドワーク」にはとても大事な考え方です。これを垂直思考と比較したのが上の図です。垂直思考はテーマが発見できた後の思考モードです。大学のゼミナールで、本を読んで論文を仕上げる時に思考モードと言った方がわかりやすいかもしれないですね。しかし、多くの学生は自分のテーマが見つかっていないわけです。この「テーマ発見」では、垂直思考ではいけない。これを多くの学生はわかっていません。「発見の学び」は「水平思考」モードが重要です。

 水平思考は「脇道にそれる思考」です。これは、まさに川喜田先生の「飛石づたい」です。知的好奇心が赴くままに、どんどん脇道にそれて、面白いもの、不思議なものを収集しましょう。なぜ、自分の直感で脇道にそれることが大事なのか?それは「他の人が考えもしない独自の視点で見る」トレーニングになるからです。そして、本やWEBにある既存の答えを検証するようなフィールドワークの弊害から逃れるためです。(この検証は「わかるモデル」でやるので、安心してください)

 フィールドに出た際の思考モードはお分かりいただけたと思いますので、次は課題に重要な「知図」の描き方について解説しましょう。

道具3:知図化

「知図」の作成手順は、9つのステップがあります。

1)「探検の五原則」にしたがって、あてもなく好奇心の赴くまま、水平思考で歩き、気になったものは全て写真におさめる。

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2)歩いて遭遇した看板の説明や現在地がわかる街の地図は貴重な情報源になるので、それも写真におさめておく。

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3)帰宅したら、記憶が鮮明なうちに「知図」を描き始める。紙の大きさは後から見てわかりやすいサイズを選ぼう。A4かA3サイズがお勧め。

4)まず、歩いた範囲をグーグルマップで確かめ、その範囲の簡単な地図を描く。鉄道、川、大きな道路程度で十分。

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5)次に自分が歩いた道を地図で確かめ、気になったポイントを全て地図に書き込む。

6)気になったポイントのイラストを描く。うまい、へたは関係ない。

7)さらに看板情報や現地の人から聴いた情報を書き込む。まず知図に書き込む情報はフィールドで収集した情報のみにしよう。

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8)知図を描きながら、思い浮かんだ仮説やアイデアも書き込んでおく。

9)時間があれば、色を塗る。知図がとても美しくなる。

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 月曜日の講義では、この辺りを皆さんにより詳細に解説していきますので、よろしくお願いします。では、知図づくり、楽しんでください!!